親子登山でも登山計画書は出すべき?出し方と書く内容

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長男が5歳だった春、奥武蔵の低山で分岐を一本まちがえました。
気づいて戻るまでに30分ほどかかり、その間、年少だった長女は私の背中で眠っていました。

帰ってから妻に話すと、「そもそも、どの山に行くのか聞いてなかった」と言われました。
もしあのまま道に迷っていたら、家族は私たちを探す手がかりを何も持っていなかったことになります。

埼玉県在住の森下拓海です。
アウトドア用品店で8年働いたあと、いまは物流会社に勤めながら、小学3年の長男と年長の長女を連れて関東近郊の低山を歩いています。
家族登山を始めて5年目になりました。

この記事では、子連れの低山歩きでも登山計画書を出したほうがいい理由と、出し方、書く内容をまとめます。
数字や制度は警察庁や県の資料で確かめたもので、2026年11月時点の内容です。

親子登山でも登山計画書は出したほうがいい

埼玉の低山では、出すかどうかは自分で決める

埼玉県内の山について、登山届の提出は法律で義務づけられていません。
埼玉県警の様式ダウンロードページにも、そのように明記されています。

それでも県警は、届け出を強くすすめています。
埼玉県警の「登山届の提出」ページには、登山届は遭難したときに警察が捜索・救助をするための手がかりだと書かれています。
未提出だったために捜索範囲を絞れず、いまも行方不明のままの人が多くいるとも書かれています。

ここで言う登山計画書と登山届は、ほぼ同じものです。
いつ、誰と、どの道を歩くかを書いた紙やデータだと考えてください。

遭難は身近な低山でも起きている

警察庁がまとめた令和7年における山岳遭難の概況等によると、2025年の山岳遭難は3,122件、遭難者は3,623人でした。
前の年より176件増えています。

遭難のきっかけは、道迷いが30.9%で最も多く、転倒が19.2%、滑落が17.3%と続きます。
20歳未満の遭難者も164人いました。

身近な埼玉の山も例外ではありません。
埼玉県警の山岳遭難ニュースによると、2025年4月末までに県内で起きた22件のうち、13件は標高1,000m未満の低山でした。
同じ資料には、「低山だから必要ない」「いつも登っているから必要ない」と言って登山届を出さない人が少なくないとも書かれています。

日本山岳会埼玉支部が公開している講演会の記録では、埼玉県警山岳救助隊の隊員が、2025年の県内の遭難77件のうち登山届が出ていたのは25件、約32%だったと説明しています。
3件に2件は、登山届が出ていない遭難だった計算です。

警察庁の資料では、遭難の76.3%で、現場から携帯電話や無線機を使って救助を求めていました。
電話がつながれば、助けは呼べます。

ただ、子どもを連れて道に迷っているときに、自分のいる場所を落ち着いて説明できるかというと、私には自信がありません。
電池が切れたり電波が届かなかったりすれば、電話そのものが使えなくなります。
そんなとき、家族と警察の手元にある計画書が、居場所を絞り込む材料になります。

書いているうちに計画の穴が見つかる

警察庁の資料は、登山計画書を「計画に不備がないか事前に確認するもの」とも説明しています。
これは実際に書いてみるとよく分かります。

私は子どもと歩くとき、標準コースタイムの1.5倍で予定を組んでいます。
計画書の予定時刻を埋めていくと、「この時間に山頂だと、下りは日が傾き始める」といったことが出発前に見えてきます。

たとえば、標準コースタイムで登り1時間20分の山なら、子どもと一緒だと2時間ほどかかります。
9時に歩き始めて山頂は11時、お昼を食べて12時に下り始めると、計算上は13時半ごろに登山口へ戻ります。
ここに休憩や寄り道を足すと、14時を過ぎます。
冬の関東は16時半前後に日が沈むので、思っていたほど余裕はありません。

途中で下山できる道(エスケープルート)を調べるのも、書く欄があるからこそ忘れずにすみます。

届け出が義務になっている山もある

家族で遠出すると、届け出が条例で義務になっている山域に入ることがあります。
主なものを表にまとめました。

県届け出が必要になる場所
長野県県が指定した登山道(八ヶ岳、奥秩父、北・中央・南アルプスなど)
岐阜県北アルプス地区、御嶽山、焼岳、白山(過料の規定あり)
群馬県谷川岳の危険地区(クライミング向けのルート。一般登山道は対象外)
富山県積雪期の剱岳周辺

岐阜、群馬、富山は本格的な山が対象なので、低山中心のわが家には縁が薄い条例です。
気をつけたいのは長野県です。

子ども向けのコースでも対象になることがある

長野県の登山計画書の案内ページでは、届け出が必要な山域として八ヶ岳の蓼科山、北横岳、天狗岳や、奥秩父の金峰山などが挙げられています。
県の指定登山口の一覧を見ると、北八ヶ岳の白駒池登山口(小海町・佐久穂町)も、丸山・中山へ向かう登山口として載っていました。

白駒池から丸山へ向かうコースは、夏の親子登山の候補によく挙がります。
トレッキング案内人の浜西慎一さんが親子向けの山を紹介しているnoteでも、白駒池から高見石、丸山へ向かうルートが夏のおすすめとして紹介されています(note上の表記は濱西慎一さんです)。
子どもでも歩ける道かどうかと、届け出が必要かどうかは別の話です。

長野県の山に行くときは、県の指定登山道位置図で歩くルートを確かめておきましょう。
長野県では、コンパスやYAMAPから出した計画書も、県に届け出たものとして扱われます。
ふだん埼玉の山で使っているアプリのまま出せるので、手間は増えません。

登山計画書の出し方

出し方は大きく分けて4つあります。
埼玉県警と長野県の案内をもとに整理しました。

出し方どんなときに向いているか
警察や県の電子申請出発前に家でじっくり書くとき
登山アプリ(コンパス、YAMAPなど)ルートを地図で作りたいとき、下山の連絡まで管理したいとき
紙に書いて登山ポストや警察署・交番へスマホの操作が苦手なとき、登山口にポストがあるとき
家族に写しを渡すどの方法で出すときも必ず

埼玉県警は、パソコンで詳しく書く電子申請のほかに、スマートフォンから入力項目を減らして出せる携帯版も用意しています。
書き忘れたときや急に行き先を変えたときに、移動中の電車やバスの中からでも出せるそうです。

コンパス(日本山岳ガイド協会の登山届システム)とYAMAPから出した登山届は、埼玉県警にも共有されます。
長野県の発表によると、2025年度に県へ届いた登山計画書は402,850件で、そのうち80.0%がインターネット経由でした。
いまはオンラインで出すのが主流になっています。

わが家は、出発の前日の夜に出すことにしています。
天気予報を見て行き先を決め直すことが多いので、早く出しすぎると書き直す手間が増えるからです。

当日の朝に行き先を変えたときは、出し直せばすみます。
埼玉県警の携帯版なら移動中でも出せます。
長野県も、ながの電子申請では提出日時の新しいものを変更後の計画として扱うと案内しています。
登山を中止するときの入力や、下山届は要らないそうです。

わが家はアプリで出して、紙を1枚冷蔵庫に貼る

わが家は、登山アプリで届けを出したうえで、行き先と帰りの予定時刻を書いた紙を冷蔵庫に貼っていきます。
妻が一緒に来ない日でも、ひと目で予定が分かるようにするためです。

埼玉県警も、電子申請で出した場合は家族や職場に予定が分かるメモを渡すように、紙で出した場合は写しを渡すようにと案内しています。
警察に出すことと、家族が知っていること。
この2つをそろえておくと安心です。

登山計画書に書く内容

様式に並んでいる項目

埼玉県警の手書き用様式には、主に次の項目が並んでいます。

  • 参加する全員の氏名、年齢、生年月日、住所、電話番号
  • 緊急連絡先
  • 登山開始の日時と下山予定の日時
  • 山の名前と、その山に登った経験があるか
  • 行動計画(通過する地点と時刻)
  • 持ち物(地図、コンパス、雨具、ヘッドライト、応急手当用品など)
  • 使う交通機関、車で行く場合は車種とナンバー
  • 山岳保険に入っているか、電子捜索機器を持っている場合はその名称とID番号

全部を完璧に埋めようとすると手が止まります。
最初は、誰と、どこを、何時から何時まで歩くかが伝われば十分です。

車のナンバーは、意外と大事な欄です。
登山口の駐車場に車が残っていれば、まだ山の中にいるという手がかりになります。
わが家は車で出かけることがほとんどなので、ここは毎回必ず書いています。

緊急連絡先は「山に来ない大人」にする

夫婦そろって子どもと登る日は、緊急連絡先に配偶者を書いても意味がありません。
同じ山にいるからです。

わが家では、そういう日は近くに住む私の母を緊急連絡先にしています。
書くだけでなく、行き先と帰りの予定時刻を母にも伝えておきます。
コンパスでは、届けを出すと作成者の緊急連絡先にも確認のメールが届くので、母のメールアドレスを登録しています。

子連れなら書き足しておきたいこと

子どもと一緒のときは、様式の項目に加えて備考欄に次のことを書いています。

  • 子どもの学年と年齢
  • 子どもの服の色
  • 子どものペースで組んだ予定であること
  • 引き返すと決めた時刻
  • 途中で下りられる道

服の色は、もしものときに遠くから見つけてもらう手がかりになります。
引き返す時刻を書いておくと、山の上で「あと少しだから」と迷ったときに判断しやすくなりました。

備考欄の記入例

わが家が実際に書いている備考欄の文面を、名前を伏せて載せておきます。

同行:長男(小学3年・8歳)、長女(年長・6歳)
子どもの歩行に合わせ、標準コースタイムの1.5倍で計画。
12時までに山頂に着かない場合は、その場で引き返す。
服装:長男は青の上着、長女は黄色の上着と赤い帽子。
大人のザックに子ども用の雨具と防寒着、行動食を携行。

5行ほどでも、探す側にとってはかなりの手がかりになるはずです。

下山したら連絡するまでがセット

計画書は、出して終わりではありません。
無事に下りたことを伝えて、はじめて役目を終えます。

コンパスの使い方ページによると、コンパスで届けを出した場合は、下山後に「下山通知」を送ります。
下山通知がないまま、あらかじめ選んだ時間(3、5、7、9時間から設定)が過ぎると、緊急連絡先に下山が確認できていないことを知らせるメールが届く仕組みです。
下山の時間を変えたときも、緊急連絡先に通知が届きます。

子どもと歩いていると、予定より遅れるのはよくあることです。
遅れそうだと分かった時点で下山時間を変えておけば、待っている家族を不安にさせずにすみます。

わが家では、登山口に戻ったら下山通知を送り、車に乗る前に妻へ「下りたよ」とひとこと送ります。
この連絡を忘れると、家族に余計な心配をかけてしまいます。
帰りの車で子どもが寝る前に済ませるのが、わが家の決まりになっています。

まとめ

埼玉の低山では、登山計画書を出すかどうかは自分で決めることです。
それでも、遭難の3割は道迷いで、身近な低山でも起きています。
出しておけば、もしものときに探す側の手がかりになります。

長野県の指定登山道のように、子ども向けとして紹介されるコースでも届け出が必要な場所があります。
出し方は電子申請、アプリ、紙のどれでもかまいませんが、家族への共有はどの場合もセットです。
書く内容は、誰と、どこを、何時から何時まで歩くかが基本で、子連れなら服の色と引き返す時刻を書き足しておくと役に立ちます。

うちの長男は最近、計画書の予定時刻を一緒に見ながら「ここで休憩だね」と言うようになりました。
次の週末に出かけるなら、まずは5行の備考欄から書いてみてください。